Column.037 マイスターへの道~バール・スコップ編~
今期は災害救援活動が多かったですね。
いわゆる西日本豪雨では、岐阜県関市、愛媛県宇和島市、岡山県真備町、広島県坂町と夏の間各地を転戦したメンバーも多いのではないでしょうか?
さて、水害現場で必須の道具
「バール」と「スコップ」
当然のことながら用途や特性によって使い分けられて一人前です(笑)
「えっ!バールとスコップってどれもおんなじじゃないの?」と思ったそこのあなた!
これを読めば、今日から君もバール&スコップマイスターだ!
まずはバールから
IVUSAが水害現場で使うバールはだいたい3種です。
・平バール
一般的に現場で「バール」と呼んでいるのはこれのこと。
IVUSA装備には、長さ30センチくらいから1メートルくらいまでのラインナップがあります。
てこの原理を使って、床板や壁材などを剥がす際に使用します。
L型で先端が割れてくぎ抜きとしても使える尾割れタイプを多用していますが、鶴首型やスクレーパータイプもあります。ちなみに、片方がとがっているものは「鉄梃(かなてこ)」といって区別しています。
狭い可動域で梃子を効かせたいことが多い水害現場では、両端が180度ではなく90度のバールがベストですので、装備購入時には注意してください。
(90度)
(180度)
・鍛冶屋バール
水害時の床板剥がしの基本は、きれいに剥がして洗浄-消毒-乾燥-再利用できるように行います。家屋の修繕費をできるだけ抑えるためにも必須となります。
床板を剥がす際に、釘がしっかり効いた床板の場合、バールによる梃子の原理の力技だと床板が割れてしまいます。そこで、この鍛冶屋バールで釘を抜いてから床板をきれいに剥がします。
応用として、特に錆による効きが強い場合、釘〆ポンチまたは三徳釘〆バールで、釘の頭をたたいて加締めることで錆を落として剥がしやすくすることがあります。
・リフォームバール、インテリアバール
先端が薄めのスクレーパー形状になっており、可動域が極端に狭い場合や、洋間、板間、フローリング材の淵外しに必須。
IVUSAでは握柄付きのものを多用して「リフォームバー」と呼称しています。
続いてスコップ・ショベル
剣スコ、角スコ・平スコといった名称と用途はご存知でしょうから割愛して、別な切り口から
・基本はオールスチール
スコップには大きく木柄と、柄の部分が空洞軽量化された金属製の二つがあります。
耐久性を考えて金属製を多用します。
オールステンレスもありますが、コスパ的にオールスチールで十分です。
最近は柄の部分と刃の部分の継ぎ目が密封されているものも売られています。
今後の購入時にはこちらのほうがいいでしょう。
なぜ?と思った方・・・
水害現場の泥は粘土質が多く、作業終了後の装備メンテナンスの際、高圧洗浄機でも隙間の泥は落ちません。たわしでごしごしこすって落としています。
継ぎ目がないだけでも洗浄作業の効率化は飛躍的に上がります。何と言っても何十本もありますから。
・先幅、肩幅使い分け
災害救援時だけでなく、活動時の現場作業で「側溝の泥出し」というミッションがあります。
この側溝、一般的にはU字溝を指す場合が多いのですが、現場についたらスコップが入らない!という経験はないですか?
U字溝の幅はJIS規格で決まっており、一般的には300㎜です。普通のスコップならば、ちょうど入りますが、少し幅広タイプのスコップだと入りません。450㎜、600㎜という大きい側溝だと問題ないです。
他にも150㎜、180㎜、240㎜というタイプもあるので、これだと普通のスコップは入りません。この3タイプは幅と深さが一緒ですから、150㎜タイプは園芸用のシャベルなどでも対応できますが、240㎜になると細身のスコップでないと作業効率的に厳しいですよね。
なので、スコップを選択する際に、剣スコならば「肩幅」、角スコならば「先幅」がいくつなのかを把握し、側溝の幅に合わせて装備を準備しておくと、「おっ!今回の装備はいい仕事するね~」と評価はうなぎのぼりです。
装備にはそれぞれ機能があります。どんな作業をどういった作業環境で行うのか、より効率的に成果を求めて作業をするためには、こうした細かい組み合わせの妙が、結果に対する大きな違いを生み出します。
「バール3本持ってきて!」と先輩に言われたら、「どのバールですか?」とか「メイン作業は何ですか?」って聞き返してください。
「わかってるな~」と、必要以上に評価されるか、「うるさい何でもいい!」と面倒がられるかは運次第ですけど・・・
まぁ、「バールって何ですか?」と答えて、卒業時まで「バルサン」とあだ名されるよりかは幾分ましだと思います。
いかがだったでしょうか?人も道具も組み合わせの妙で結果が変わる。
IVUSAではこんなことも学べるんですね~。
心が震えたそこのあなた!
マイスターを目指してみては?